クラウドコンピューティングとは?意味や仕組みを分かりやすく解説【今さら聞けない】

2023/05/28

現代のIT技術の中で、クラウドコンピューティングは最も注目されている分野の1つです。

しかし、その詳細を知らない人も多く、今さら聞けないと感じている方もいるかもしれません。

そこで、本記事では、クラウドコンピューティングの基本的な意味や仕組み、種類、メリットやデメリット、そして具体的な活用方法やサービス事例について分かりやすく解説していきます。


クラウドコンピューティングとは?分かりやすく解説


クラウドコンピューティングとは、インターネットを介して必要なコンピュータリソースを提供することで、必要に応じて利用できるようにする技術です。

この技術を利用することで、自社でコンピュータリソースを保有する必要がなくなり、必要な時に必要な量だけリソースを利用することができます。

これにより、コスト削減やスケーラビリティ(システムの拡張性)の向上、災害対策の強化など、多くのメリットがあります。

また、クラウドコンピューティングには、SaaS、PaaS、IaaSなどの種類があり、用途に合わせて選択することが重要です。

ただ、クラウドコンピューティングには、セキュリティや可用性のリスクなどのデメリットも存在するため、適切な利用方法を考慮する必要があります。

クラウドコンピューティングの種類


一口にクラウドコンピューティングと言っても、用途やシーンに合わせて主に3つの種類があります。

ここでは、クラウドコンピューティングの種類について、それぞれ具体例を用いながら解説します。

SaaS
PaaS
IaaS

SaaS


SaaS(Software as a Service)は、ソフトウェアをインターネット経由で提供するクラウドサービスの一種です。利用者は、専用のクラウド上にあるソフトウェアをインターネットを通じて利用することができます。

SaaSの代表的な具体例は、GmailやMicrosoft 365などのオフィスツールです。これらは、従来のパッケージソフトとは異なり、クラウド上で提供されています。ユーザーは、Webブラウザや専用のアプリを介して、必要な場所からこれらのソフトウェアにアクセスできます。

また、顧客管理や販売管理、会計ソフトなどのビジネスアプリケーションも、SaaSの形態で提供されています。これらのアプリケーションを利用する場合、専用のサーバーやデータベースを自社で用意する必要がなく、クラウド上にあるサービスを利用することでコスト削減が可能となります。

SaaSは、アプリケーションの開発や保守、アップグレードをクラウドサービス提供者が行うため、利用者はその手間を省くことが可能です。また、利用者は必要な分だけ利用料を支払うため、運用コストの削減にもつながります。


PaaS


PaaS(Platform as a Service)は、クラウドサービスの一種で、アプリケーションを開発・実行するためのプラットフォームを提供するサービスです。ユーザーはアプリケーションの開発に必要なインフラストラクチャー(基盤や要素のこと)やプラットフォームを自前で用意する必要がなく、必要なコンピュータリソースについてはPaaSプロバイダによって提供されます。

具体例としては、GoogleのApp EngineやMicrosoftのAzureが挙げられます。

GoogleのApp Engineは、Webアプリケーションやモバイルアプリケーションを開発するためのプラットフォームを提供しています。App Engineは、Googleのデータセンター上でアプリケーションを実行するためのプラットフォームを提供し、開発者はアプリケーションの開発に必要なインフラストラクチャーやプラットフォームを自前で用意する必要がありません。

また、MicrosoftのAzureは、Webアプリケーションやモバイルアプリケーションの開発、デプロイ、および管理を行うためのPaaSプラットフォームを提供しています。Azureには、.NET、Node.js、Java、Pythonなどの言語やフレームワークに対応したツールやリソースが用意されており、開発者はそれらを利用してアプリケーションを開発することができます。

これらのPaaSプラットフォームを利用することで、開発者はアプリケーションの開発に専念できるため、開発プロセスが簡素化され、より迅速なアプリケーション開発が可能になるのです。


IaaS


IaaSは、Infrastructure as a Service(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)の略で、サーバーやストレージ、ネットワークなどの基盤となるインフラストラクチャーを、クラウドプロバイダーが提供するサービスのことを指します。

具体例を挙げると、Amazon Web Services(AWS)、Microsoft Azure、Google Cloud Platform(GCP)などがIaaSの代表的なクラウドプロバイダーです。これらのサービスでは、ユーザーは自分たちのアプリケーションを実行するための仮想マシンやストレージなどのリソースを、必要に応じて自由に追加・削除することができます。

また、IaaSを利用することで、自社でサーバーを保有する必要がなくなり、コスト削減が期待できます。例えば、自社でサーバーを保有する場合には、サーバーの購入・設置・保守などにコストがかかりますが、IaaSを利用することでこれらのコストを削減することが可能です。

さらに、IaaSでは、仮想マシンを利用することで、自社で必要な処理能力をいつでも柔軟に調整できるため、急激なアクセス数の増加やビジネスの変化にも柔軟に対応できるようになります。


クラウドコンピューティングのメリット


クラウドコンピューティングを利用することで様々なメリットがあります。

ここでは、ビジネスの観点から主要なメリットを4つ紹介します。

コストを削減できる
柔軟性と拡張性に優れる
高度なセキュリティ対策
グローバル展開が容易になる

コストを削減できる


クラウドコンピューティングは、自社でサーバーやストレージ、ネットワーク機器を導入・運用する必要がなく、必要なときに必要な分だけ利用できるため、初期投資やランニングコストを大幅に削減できます。

また、クラウドコンピューティングでは、必要なときに必要な分だけリソースを利用できるため、無駄なリソースを抱えることがなくなります。

たとえば、自社でサーバーを導入する場合、将来的な需要を見込んで大きなサーバーを用意することがありますが、必要以上のリソースを持つことで、余計なコストがかかる危険があるでしょう。

しかし、クラウドコンピューティングでは必要なリソースを必要な時に利用できるため、無駄なリソースを持つことがありません。

さらに、クラウドコンピューティングでは、リソースの管理や保守、アップグレードがクラウドプロバイダー側で行われるため、自社で行う場合に比べて人件費を削減できます。

そして、プロバイダー側が最新技術を採用している場合が多いため、自社で保有することが難しい高度な技術を利用することができることも、コスト削減につながる要因の一つです。


柔軟性と拡張性に優れる


柔軟性と拡張性に優れていることも、クラウドコンピューティングを利用するメリットの1つです。

まず、クラウドコンピューティングでは、必要に応じてリソースを追加・削除することが容易になります。

これは、クラウド上で提供されるサービスを利用する際、必要なCPUやメモリ、ストレージなどのリソースを瞬時に増減できるためです。

一方で、従来の古い環境である、オンプレミス環境では、リソースの増減には物理的なハードウェアの追加・削除が必要となり、手間とコストがかかっていました。

また、クラウドコンピューティングでは、複数のユーザーが同時に利用するためのマルチテナンシーが可能です。

つまり、複数の顧客が同じサーバーなどのリソースを共有することができ、ユーザーごとに独自のリソースを用意する必要がなくなります。

これにより、リソースの無駄を減らすことができ、コストを削減できます。

さらに、クラウドコンピューティングでは、リソースの利用状況に合わせて課金される従量制課金が一般的です。

つまり、必要なリソースを必要なだけ利用するため、無駄な費用を節約することができます。

また、必要なリソースが増えた場合には、従量制課金に基づいた料金体系で追加費用が発生するため、必要なときに必要なだけ追加できる柔軟性があります。

このように、クラウド環境では、必要なリソースを必要な時に必要なだけ利用できるため、ビジネスの需要に応じて柔軟にシステムを拡張することができるのです。

高度なセキュリティ対策


クラウドコンピューティングでは、セキュリティに関する専門知識を持ったエンジニアやセキュリティチームが常に監視し、最新のセキュリティ対策を実施しています。

また、多くのクラウドプロバイダーは、物理的なセキュリティ対策やデータの暗号化など、高度なセキュリティ対策を提供しています。

これにより、オンプレミス環境よりもセキュリティリスクを低減できるのです。

さらに、クラウドプロバイダーは、専用のセキュリティ対策ツールや専門のセキュリティチームを持っているため、緊急時に迅速に対応することができます。

そして、データのバックアップや災害復旧などもクラウドプロバイダーが行ってくれるため、データの安全性も高められます。

以上のように、クラウドコンピューティングを利用することで、高度なセキュリティ対策が実現できると言えるでしょう。

グローバル展開が容易になる


クラウドコンピューティングはインターネット上で提供されるため、物理的な場所に縛られずに世界中どこからでもアクセスできます。

このため、グローバル展開に必要なインフラやサポートの準備が少なくて済み、新しい市場への参入も迅速に行うことができるのです。

また、クラウドサービスは多言語・多通貨対応が容易であり、国際的な法規制や規格に対応するためのセキュリティ機能も備えている場合が多いため、グローバル展開に伴う法的な問題やセキュリティのリスクを軽減することができます。


クラウドコンピューティングのデメリット


次は、クラウドコンピューティングのデメリットについて紹介します。

先述したメリットと照らし合わせて、自社に導入するかどうかを決定しましょう。


インターネットがないと利用できない


クラウドコンピューティングは、インターネットを介してリソースにアクセスするため、インターネットに接続されていない環境では利用することができません。

例えば、企業の内部ネットワークに閉じたシステムでの利用や、オフライン環境での利用が困難となります。

また、インターネット接続環境が不安定であったり、通信速度が低い場合、快適な利用ができない可能性もあります。

そのため、クラウドコンピューティングを利用する場合には、安定した高速なインターネット環境が必要となるので注意しましょう。

カスタマイズが難しい


クラウドコンピューティングには、多くの場合、標準化されたサービスが提供されます。

この標準化されたサービスは、大量の顧客に対応するために、一般的に汎用的な機能と設定で提供されます。

そのため、企業独自のニーズに合わせたカスタマイズが必要な場合、クラウドサービスを提供するベンダーとの協議が必要になり、そのプロセスは煩雑で時間がかかることがあるでしょう。

さらに、カスタマイズが行える場合でも、追加のコストがかかることがあります。

そのため、大きなカスタマイズが必要であれば、システム開発会社に自社専用のシステム開発を依頼した方がいいかもしれません。

サービス終了のリスクがある


クラウドコンピューティングにおいて、サービス提供業者がそのサービスを提供することをやめる可能性があります。

これは、サービス提供者が経営状態が悪化し、そのサービスを維持することができなくなった場合や、他の事業に注力するためにサービスを廃止するケースなどです。

このような場合、ユーザーは突然サービスを利用できなくなるため、業務上の影響が出る可能性があるでしょう。

また、サービス提供業者が廃業した場合、ユーザーはデータの引き継ぎ等を行うために、急遽別のサービスに移行する必要があるかもしれません。

既存の社内システムと相性が悪い可能性がある


クラウドコンピューティングは、既存の社内システムと相性が悪い可能性があります。

これは、企業がすでに使用しているシステムやデータベースが、クラウドサービスの仕組みと異なる場合があるためです。

たとえば、企業が自社のデータセンターに保管しているデータをクラウドに移行する場合、そのデータをクラウド上で扱うための適切なフォーマットやプロトコルを選択しなければなりません。

さらに、企業が既に使用しているアプリケーションがクラウド上で動作しない場合があります。

これは、アプリケーションが特定のオペレーティングシステムやミドルウェアに依存している場合や、クラウドプロバイダーの仕組みが異なる場合に起こります。

この場合、アプリケーションを再設計する必要があるため、コストや時間がかかる可能性があるでしょう。

そのため、企業がクラウドコンピューティングを導入する際には、既存のシステムとの相性を慎重に考慮し、適切な移行戦略を立てることが重要です。


クラウドコンピューティングの活用方法



ビッグデータの処理


クラウドコンピューティングは、ビッグデータの処理にも活用されます。

ビッグデータとは、膨大な量のデータのことを指し、膨大な量のデータを処理することは、従来のシステムでは困難でした。

しかし、クラウドコンピューティングでは、複数のサーバーを組み合わせて処理を行うことができます。

具体的には、ビッグデータを解析するためのHadoopやSparkといったオープンソースのツールがクラウド上で提供されており、これらを利用することで、膨大な量のデータを高速かつ効率的に処理することができます。

また、クラウド上でビッグデータを処理することで、必要に応じてリソースを拡張することができるため、大量のデータを処理する際にも柔軟に対応することができるでしょう。
そして、ビッグデータを活用することで、企業はより正確な分析や予測を行うことができるため、ビジネス戦略の立案や意思決定に役立てることができます。

例えば、顧客の購買履歴データを分析することで、顧客の嗜好や傾向を把握し、ターゲットに合わせたマーケティング戦略を立案することができます。

また、製造工程や物流管理においても、センサーから取得したデータを分析することで、生産性の向上やコスト削減などの効果が期待できるでしょう。

リモートワーク環境の整備


クラウドコンピューティングは、リモートワーク環境を整備するためにも利用されます。

例えば、クラウド上に構築された仮想デスクトップ環境を利用することで、従業員はオフィスにいなくても、仮想的にオフィスのデスクトップにアクセスして業務を行うことができます。

また、リモートワークにおいては、従業員が使用するデバイスの管理やセキュリティにも注意が必要です。

クラウド上で提供されるデバイス管理サービスやセキュリティ対策サービスを活用することで、従業員が自宅や外出先などから安全かつ簡単に業務にアクセスできる環境を整備することができます。

さらに、リモートワーク環境においては、従業員同士のコミュニケーションやプロジェクト管理がより重要となります。

クラウド上で提供されるZoomなどのコラボレーションツールやSlackなどのプロジェクト管理ツールを活用することで、従業員同士のコミュニケーションや業務の進捗管理を効率的に行うことができるでしょう。



ソフトウェア開発


クラウドコンピューティングを利用することで、ソフトウェア開発環境の構築が容易になります。

クラウド上に必要なソフトウェアやツールをインストールし、必要な設定を行えば、開発環境がすぐに使える状態になり、また、クラウド上で開発環境を構築することで、開発者がどこからでもアクセスできるようになり、柔軟性が増すでしょう。

そして、クラウド上にテスト環境を構築することで、テストに必要なリソースをオンデマンドで利用できます。

テストに必要な仮想マシンやデータベースなどのリソースを、必要な時に必要な分だけ利用することができるため、コストの削減にもつながるでしょう。



セキュリティの向上


クラウドコンピューティングの活用方法として、セキュリティの向上があります。

クラウドプロバイダーは、大規模なセキュリティチームを抱えており、情報セキュリティの観点からの監視や脅威に対する対応を行っています。

また、クラウドプロバイダーはデータセンターの物理的セキュリティや、システムの監視やアップデート、バックアップなどを行うことで、ユーザー企業は自社でセキュリティ対策を行う場合に比べてセキュリティリスクを軽減することができるでしょう。

まとめ:クラウドコンピューティングを有効活用しましょう


「クラウドコンピューティング」とは、様々なコンピュータ資源(例えば、ソフトウェア、ハードウェア、処理能力、メモリー、ファイル、データ、人工知能/機械学習など)を、インターネット経由で提供する技術です。

そのため、必要な時に必要なリソースをすぐに利用でき、環境を用意する必要もなく、初期投資も少なくて済みます。

個人利用だけでなく、ビジネスでも必要不可欠な存在になっています。最近では、Microsoft OfficeやAdobe Creative Cloudのように、従来はパッケージで提供されていたアプリケーションも、クラウドサービスとして提供することが増えています。

クラウドサービスの目的、メリット、デメリットなどを理解し、有効活用するようにしましょう。

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