IoT(モノのインターネット)とは何か?事例を交えて分かりやすく解説

2023/05/28

近年、「IoT」という単語をよく耳にしませんか?

IoT(Internet of Things)は、現在急速に普及している最先端テクノロジーの1つであり、これからの日常生活やビジネスにも必要不可欠な要素です。

しかし、IoTについて何となくは知っていても、意味や仕組みなどを正しく理解できている方は意外と多くありません。

今回は、「IoT」について、既に導入されている事例を用いながら、分かりやすく解説するので、ぜひ参考にしてください。


IoTとは?概要を簡単に解説


IoTは、Internet of Thingsの略で、「モノのインターネット」とも呼ばれるIT技術のことです。

IoTでは、センサーやアクチュエーター(電気などのエネルギーを何かを動かす力に変える装置)を搭載した機器や電子機器などがインターネットに接続され、機器同士が通信し、データを交換することができます。

このため、IoTを導入することで、機器同士が自動的に連携し、効率的な業務や生活を実現することが可能になるのです。

例えば、家電製品をスマートフォンで制御することができたり、工場の機械を自動監視して、効率的にメンテナンスすることができたりします。

IoTは、現在急速に発展しており、様々な分野で活用されており、スマートシティやスマートホーム、自動運転車、健康管理など、生活や産業においてIoTはますます重要な役割を果たすでしょう。

IoTで実現できること


では、実際にIoTを活用して、どのようなことが実現できるようになるのか、を具体的に解説します。

IoTで実現できることは以下の通りです。

モノを遠隔操作
離れた場所からモノの状態を把握
離れた場所からモノや人を検知

モノを遠隔操作


IoTを利用することで、スマートフォンやパソコンなどの端末から、遠隔地にある機器を操作することが可能です。

例えば、スマートホームに導入されたIoT機器を遠隔で操作することで、家の中の電気やエアコンの設定を変更したり、ドアの施錠を解除することができます。

また、IoT技術を応用した産業用ロボットや自動車などは、遠隔地から運転や操作を行うことが可能となり、人手が届かない危険な場所での作業や、天災などで避難が必要な場合にも役立つでしょう。

離れた場所からモノの状態を把握


IoTを利用することで、遠隔地からモノの状態をリアルタイムで把握することができます。

例えば、自宅の監視カメラやスマートメーターを使えば、外出先からでも家の中の状況を確認することが可能です。

また、工場のIoTデバイスを使えば、製品の生産状況や機械の稼働状況を遠隔地から監視することができます。

これにより、効率的な遠隔作業が可能になり、コスト削減にもつながると期待されています。


離れた場所からモノや人を検知


IoTによって、モノや人を離れた場所から検知することができます。

センサーやカメラなどを使用し、ネットワークを介して情報を収集し、それを解析することで、遠隔地からでも様々なデータを収集することが可能です。

例えば、センサーを取り付けた工場の機械の稼働状況を監視し、異常が発生した場合にすぐに警告を発することができ、また、街中に設置されたセンサーで空気の汚染度を測定し、すぐに情報を収集することもできます。

さらに、スマートホームにはカメラや音声認識システムが装備されており、家の中で何が起こっているかを遠隔地から監視することも可能です。

例えば、防犯カメラを使って、家に誰かが侵入した場合には、オーナーに警告を発するなど。

そして、これらの検知技術は、セキュリティや安全性を高めるだけでなく、ビジネスにも役立ちます。

例えば、小売店では、センサーを使って商品の在庫状況を監視し、必要な商品を自動的に注文することができ、顧客の行動を追跡することで、店内のデザインや陳列方法を改善することが可能になるでしょう。



IoT技術の活用事例【分野別に紹介】


IoT技術が実際にどのような場面で使用されているのか、IoTの活用事例をいくつか分野別に紹介します。

ここで紹介する事例を参考にすることで、IoTについて具体的にイメージしやすくなるでしょう。

IoTの活用事例①:農業


農業において、IoTは既に様々な用途で活用されています。

以下が代表的な使用例です。

「気象観測」
IoTを用いたセンサーで農地内の気象データをリアルタイムに収集し、天候変化に応じた農作業の計画を立てたり、災害時には適切な対応を行ったりすることができます。


「畜産管理」
IoTセンサーを動物に取り付け、体温や行動、飲水量などのデータを収集することで、動物の健康状態を監視し、早期発見・治療につなげます。また、センサーから得られたデータを元に、飼料や飼育環境の最適化を行うことで、生産性を向上させることもできます。


「自動潅水システム」
IoTを用いた自動潅水システムを導入することで、適切な量の水を必要な場所に効率的に供給することができます。農作物に必要な水分量をセンサーで検知し、天候データと照らし合わせて自動で潅水することができるため、従来の手動潅水に比べて効率的な水利用が可能です。


「野菜の品質管理」
IoTセンサーで野菜の品質を管理し、販売前に品質の高いものを選別することができます。野菜の育成環境や成長状況をセンサーで管理し、最適な時期に収穫することで、より鮮度が高く、品質の良い野菜を生産することができるのです。


これらのように、IoTは農業においても多様な用途で活用され、生産性や品質の向上に貢献しています。


IoTの活用事例②:交通


交通分野におけるIoTの活用事例としては、以下のようなものがあります。


「自動運転車の開発」
IoTセンサーを搭載した自動運転車は、自動的に周囲の車両や歩行者を検知し、安全な運転を実現することができます。また、走行中に車両データを収集し、リアルタイムで分析することで、運転手や自動車メーカーが運転の改善点を把握することが可能です。


「交通量調整システム」
IoTセンサーを道路や交差点に設置することで、交通量をリアルタイムで把握し、信号制御や道路の状況分析に活用することができます。これにより、交通渋滞の緩和や、効率的な信号制御による燃費改善などが期待されます。


「駐車場の空き状況管理」
IoTセンサーを駐車場の入口や各駐車スペースに設置することで、空き状況をリアルタイムで把握することができます。この情報をスマートフォンアプリなどで提供することで、ドライバーは空いている駐車スペースを簡単に探すことができるようになります。


「車両管理システム」
IoTセンサーを車両に搭載し、車両の位置情報や走行データを収集・管理することで、車両の盗難防止や燃費改善、運転者の走行スキル改善などに役立ちます。



これらのIoT技術の活用により、交通環境の改善や運転の安全性向上、効率的な車両管理などが実現され、社会的なメリットが生まれることが期待されています。


IoTの活用事例③:製造


製造分野におけるIoTの活用事例は、以下のようなものがあります。

「スマートファクトリー」
製造ラインの全体的な改善を目的としたIoTの活用で、各工程のセンサー情報をリアルタイムで収集し、製造ライン全体の自動化や最適化を実現しています。IoTを活用したスマートファクトリーにより、品質の向上や生産性の向上、人件費の削減などが実現できるでしょう。


「予知保全」
IoTセンサーを機械に設置し、異常や故障の前兆をリアルタイムで監視・分析することで、メンテナンスのタイミングを予測し、計画的な保全が可能です。これにより、故障による停止時間の削減や機械の寿命の延長、メンテナンスコストの削減などが期待されます。


「スマートロジスティクス」
IoTセンサーを輸送機器や荷物に設置し、位置情報や状態情報をリアルタイムで収集することで、物流の可視化や最適化を実現しています。具体的には、荷物の位置情報を追跡することで、荷物の輸送状況の可視化や遅延の早期発見が可能です。
また、温度・湿度・振動などの環境情報を収集することで、品質管理や監視が行えます。


「デジタルツイン」
製造する製品や設備を、IoTセンサーで収集したデータを元に、仮想的に再現することで、製品や設備の設計・改善を行うことができます。例えば、製品の性能や品質を評価するために、IoTセンサーで収集したデータを元に、製品のデジタルツインを作成し、その上で様々なテストを行うことが可能です。これにより、製品の開発期間を短縮し、製品の品質向上や競争力の強化が期待されます。


IoTの活用事例④:医療


医療分野においてもIoT技術は活用され、様々な効果が期待されています。

以下に代表的なIoTの医療分野での活用事例をいくつか紹介します。


「スマートウォッチによる健康管理」
スマートウォッチは、心拍数や歩数、睡眠時間などの健康管理に活用されています。これらのデータはスマートフォンなどに蓄積され、医師や看護師が患者の健康状態をリアルタイムで把握することができます。また、スマートウォッチに搭載されたセンサーを利用して、転倒や異常な動きなどの情報も収集することも可能です。


「IoTを活用した病室管理」
病室に設置されたIoTデバイスにより、患者の体温や血圧、薬の服用状況などを自動的に収集することが可能です。これらのデータはクラウド上に保存され、医療スタッフがリアルタイムで確認できます。また、病室の温度や湿度なども自動的に調整され、快適な環境を提供できるようになります。

「スマートグラスによる手術支援」
スマートグラスは、手術中に医師が必要な情報をリアルタイムで表示することができるため、手術支援に活用されています。例えば、手術中にCTスキャン画像やX線画像を表示することで、より正確な手術を実現可能です。


「IoTを活用した在宅医療」
IoTデバイスを利用することで、在宅での医療サービスを提供することができます。例えば、高齢者の在宅医療では、センサーデバイスによって健康状態や食事量、排泄量などを定期的に収集し、医師や看護師がリモートで健康状態を管理することができます。


以上のように、IoTは医療分野でも様々な場面で活用されています。今後もIoT技術の進化に伴い、医療現場での活用がますます進展することが期待されるでしょう。


IoTの活用事例⑤:建築・住宅


建築・住宅分野においても、IoT技術はさまざまな形で活用されています。

以下に代表的な事例を紹介します。


「スマートホーム」
IoTを活用したスマートホームは、家電製品や設備機器をネットワークでつなぎ、スマートフォンなどから遠隔操作することができます。例えば、部屋の温度や照明を調整することができたり、雨戸やドアの施錠状態を確認することなど。また、センサーを使って、人が部屋にいるかどうかや、ドアが開いているかどうかを検知することが可能です。これにより、省エネや防犯などの効果が期待されています。


「建物管理」
IoTを活用することで、建物の設備機器やエネルギー使用状況を遠隔で監視・制御することができます。例えば、エアコンや照明の運転状況を把握し、必要に応じて調整するなど。また、センサーを使って、建物内の空気や水質を監視することもできます。これにより、エネルギーの無駄遣いを減らしたり、快適な環境の維持を実現できるのです。


「建築物の安全管理」
IoTセンサーを使って、建物の各部位の状態を監視し、異常があれば早期に発見することができます。例えば、構造物の変形や、断熱材の劣化、建物内の水漏れなどを検知することなど。これにより、定期的な点検に比べて効率的に点検を行い、安全性を高めることができます。


「3Dプリンターを用いた住宅建設」
IoT技術と3Dプリンターを組み合わせることで、部材を工場で作成し、現場で組み立てる従来の建築方法とは異なり、建築現場で3Dプリンターを使って直接住宅を造ることができます。これにより、建築物の生産性の向上や、建物の環境性能の向上を実現できるのです。


IoT技術を普及させるための課題


ここまでは、IoTについて主にメリットを紹介してきました。

しかし、IoTを更に進めていく上で避けては通れない課題がいくつもあるのが現実です。

ここでは、IoT技術を普及させるためには、解決しなければいけない課題を紹介します。

IoT人材の不足
エネルギー不足
ネットワークへの負荷
セキュリティリスク

IoTの課題①:IoT人材の不足


IoT技術を普及させるためには、IoTシステムの設計・開発・運用を行えるエンジニアやデータ分析に関する専門知識を持った人材が必要です。

しかし、このような人材はまだ十分に育っていないため、人材不足が課題となっています。

具体的には、IoTに必要な技術や知識を習得するための教育機関やカリキュラムが未整備であったり、IoTシステムの開発や運用に必要な経験を持った人材が不足していることが挙げられます。

また、IoT技術は、エレクトロニクス、情報通信、制御工学、電気工学、ソフトウェア工学など、様々な分野の知識が必要となることもあるため、多岐にわたる専門知識を必要とすることも人材不足の原因となっているのです。

このような人材不足の問題を解決するためには、IoTに特化した専門教育機関の整備や、IoT技術に関する研修やセミナーの開催、実践的なプロジェクトを経験できる機会の提供などが必要でしょう。

また、IoT技術を活用する企業や団体が、自社の人材育成に積極的に取り組むことも重要です。


IoTの課題②:エネルギー不足


IoT技術を実装するためには、センサーやデバイスなどのハードウェアが必要であり、これらのデバイスが適切に動作するためにはエネルギーが必要です。

しかし、一部のIoTデバイスはバッテリー駆動であり、長時間の稼働が必要であるため、エネルギーの消費量を最小限に抑えることが求められます。

また、IoTデバイスは多数のセンサーや通信機能を備えているため、消費するエネルギー量も大きくなります。

ですから、IoTデバイスに必要なエネルギーは、電力やバッテリーなどの既存のエネルギー資源に依存しているため、エネルギー供給の安定性や、エネルギー効率の向上が課題となっているのです。

また、IoTデバイスの需要が増加し、IoTが広く普及すると、それに伴ってエネルギー消費量も増加することが予想されます。

このような背景から、IoT技術を普及させるためには、エネルギー資源の効率的な活用や、再生可能エネルギーの導入など、エネルギーに関する課題を解決する必要があるでしょう。


IoTの課題③:ネットワークへの負荷


IoT技術を利用することで、多くのデバイスがネットワークに接続され、データを送受信することが増加するため、ネットワークの負荷が増大することが課題となっています。

特に、高速なデータ通信が必要なアプリケーションや、リアルタイムなデータ処理が必要なアプリケーションでは、ネットワークの負荷が増大するでしょう。

これに対処するためには、より高速で安定したネットワークの構築が必要であり、IoTデバイスが通信するためのプロトコルやプラットフォームの改良が必要になります。

IoTの課題④:セキュリティリスク


IoT技術の普及において、セキュリティリスクは非常に重要な問題です。

IoTデバイスは、個人情報や機密情報などの重要なデータを扱うことがあるため、ハッカーによる攻撃の標的になる可能性があります。

また、IoTデバイスは様々な形状・種類があり、多数の異なるメーカーから提供されている点も、セキュリティの確保を難しくしている要因です。

一般的に、IoTデバイスにはリソースが限られているため、セキュリティに対する対策が十分でない場合があります。

例えば、デバイスにセキュリティ機能を実装するためのコストが高すぎる場合、その機能を削減することがあり、その結果として、攻撃者に対する脆弱性が生じる可能性が大きくなるのです。

さらに、IoTデバイスは、通常のコンピュータやスマートフォンなどと異なり、物理的なアクセスが容易である場合があります。

例えば、公共の場所に設置されたIoTデバイスは、誰でも触れることができるため、物理的な攻撃に対する対策が必要です。

このように、IoTデバイスにはセキュリティリスクが存在し、それに対する十分な対策が必要です。

IoT技術を普及させるためには、セキュリティに対する意識を高め、セキュリティの確保に対する投資を増やすことが求められます。


まとめ:これから日本でIoTはどのように進むのか?


日本においては、IoT技術を活用した取り組みが既に盛んに行われています。

例えば、自動車メーカーが自動運転技術に取り組んだり、家電メーカーがスマートホームの開発に取り組んだりしており、また、日本政府もIoT技術を活用した取り組みを進めており、スマートシティの構築や、産業のデジタル化などに力を入れています。

今後も、日本においてIoT技術は、日本政府が進める「Society 5.0」と呼ばれる社会のデジタル化を目指す取り組みにより、IoT技術を活用した革新的なサービスや製品が生まれるかもしれません。

>>「Society 5.0」とは?|内閣府ホームページ

また、人口減少や高齢化が進む日本において、IoT技術を活用して生活支援や医療などの分野での貢献も期待されています。

ただし、先述した課題を解決することが重要であり、それらの課題をクリアすることができるかどうかが、IoT技術が進展する上での鍵となるでしょう。

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