近年、日本企業においてDX化が急速に進んでいます。
これは、単に新しいテクノロジーを導入するだけでなく、ビジネスプロセスの効率化や顧客サービスの改善など、ビジネスモデル全体の変革を意味します。
本記事では、DXの基礎的な知識から、実際に社内に導入する際の手順や注意点なども解説していくので、ぜひ参考にしてみてください。
そもそもDXとは何か?定義から解説
総務省によると、DXは以下のように定義されています。
「企業が外部エコシステム(顧客、市場)の劇的な変化に対応しつつ、内部エコシステム(組織、文化、従業員)の変革を牽引しながら、第3のプラットフォーム(クラウド、モビリティ、ビッグデータ/アナリティクス、ソーシャル技術)を利用して、新しい製品やサービス、新しいビジネスモデルを通して、ネットとリアルの両面での顧客エクスペリエンスの変革を図ることで価値を創出し、競争上の優位性を確立すること」
総務省
DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称で、企業や組織がデジタル技術を活用することによって、業務プロセスやサービスの改善、革新を図る取り組みを指します。
近年、DXはビジネスの重要なトピックの一つとなっており、その必要性が高まっています。
DXを進めることで、業務の効率化や新たな価値提供が可能になるため、企業の競争力強化や市場シェア拡大につながるでしょう。
また、DXによって得られたデータの分析によって、顧客ニーズを正確に把握し、カスタマーエクスペリエンスの向上にも繋がります。
DXの本当の意味と必要性
DXは、ITやデジタル技術を導入することではなく、経営戦略の一部として取り組むことが重要です。
単に既存の業務をデジタル化するだけではなく、ビジネスモデルの転換や新たなサービスの提供を含めた、「大きな変革を促すこと」こそが、DXの本当の意味となります。
DXは、時代の変化に対応し、企業や組織が存続するために必要な取り組みです。
現在、DXを進めることは、業界のリーダー企業だけでなく、中小企業やスタートアップ企業にとっても、生存戦略としての重要な取り組みとなっています。
DXと混同されがちな言葉
DX(デジタルトランスフォーメーション)は、単にアナログからデジタルへの移行を意味する「デジタイゼーション」や「デジタライゼーション」と混同されがちですが、全く違うことを意味します。
デジタイゼーション...既存の紙による情報、物質的な情報をデジタル形式に変換すること
デジタライゼーション...組織のビジネスモデル全体を一新し、クライアントやパートナーに対してサービスを提供するより良い方法を構築すること
デジタイゼーションやデジタライゼーションは、デジタル技術を活用してアナログ情報をデジタルデータに変換するプロセスのことです。
一方、DXは、デジタル技術を利用することで、ビジネスモデルやプロセス、カスタマーエクスペリエンスを改善し、より価値あるサービスや製品を提供することを目指す、包括的な取り組みを指します。
つまり、DXは単なるデジタル化以上のものであり、デジタル技術を活用して、ビジネスのあらゆる側面を改善し、顧客満足度を高めることを目的としているのです。
デジタイゼーションやデジタライゼーションは、あくまでも情報の形式を変換することに焦点を当てた技術的なプロセスに過ぎませんので注意しましょう。
日本でDX化が推進されている背景
日本でDXが急速に広まっている原因は、複数の要因が重なっていると考えられます。
まず、世界的な競争環境が激化しており、DXによる業務改善や新しいビジネスモデルの開発が企業の生き残りに直結しているという認識が広まってきています。
また、コロナ禍により、リモートワークやオンラインサービスの需要が増加したことで、DXがますます重要視されるようになりました。
さらに、政府がDX化を推進する施策を打ち出しており、経済産業省が中心となって各企業に対して支援を行っていることも、DXが急速に広まっている一因です。
実際に、経済産業省は2018年に「DXレポート」を発表し、各企業に対してDX推進の必要性を説いています。
こうした背景から、多くの企業がDXに取り組み、業務改善や新しいビジネスモデルの開発を進めている状況にあります。
日本企業におけるDX化の普及状況
総務省が2021年に行った、日本におけるDX推進取組状況の調査によると下記図のようになっています。
参考:デジタル・トランスフォーメーションの取組状況(日本)|総務省
図を見ると、既にDXに取り組んでいる企業は、大企業で約4割、中小企業で約1割というように、大企業と中小企業で意識の差がハッキリと分かれています。
また、DXに取り組む予定のない企業は、大企業で約4割、中小企業で7割という結果です。
レガシーシステムからの脱却が急務
レガシーシステムとは、旧式のコンピューターシステムやソフトウェアのことで、古くて扱いにくい、メンテナンスが難しい、セキュリティーのリスクが高いなどの課題があります。
また、レガシーシステムは最新の技術との互換性が低く、新しいソリューションの導入に制限をもたらすこともあります。
このような課題により、レガシーシステムからの脱却が必要とされ、DX化に向けて現代的なテクノロジーを採用することが求められているのです。
特に、レガシーシステムにはランニングコスト、システムの維持や調整費が高くなる傾向があり、早急に最新技術に変更することで、結果的にシステム運用費用を抑えることができるでしょう。
また、レガシーシステムはセキュリティリスクが高く、旧式のハードウェアやソフトウェアには新しい脅威に対する対応が難しくなることがあります。
これらの課題は企業の生産性を低下させるため、より効率的で、高度な技術を採用した新しいシステムへの移行が必要とされます。
DXを導入して飛躍した企業の例
実際にDXを社内に導入し、革新的なサービスを実現した企業の事例を見ていきましょう。
Netflix
動画ストリーミングサービスで有名なNetflixは、DXによって世界的な成功を収めた企業の一つです。
従来の映像配信とは異なり、オンデマンド配信に注力したことで、視聴者のニーズに合わせたコンテンツ提供を実現しました。
加えて、AI技術を導入して視聴履歴や評価などからおすすめのコンテンツを提供することで、顧客の満足度を高めました。
Uber
Uberは、自家用車のオンデマンド配車サービスです。
タクシー産業を転換させ、グローバルなシェアリングエコノミーの先駆けとなりました。その成功の秘密は、プラットフォーム上でドライバーと利用者をマッチングし、スマートフォンアプリで簡単に配車できるようにしたことにあります。
加えて、AI技術を用いた運転ルートの最適化や、配車データの分析によるマーケティング戦略の改善にも取り組んでいます。
Airbnb
Airbnbは、宿泊施設の提供者と利用者をマッチングするサービスです。
従来の宿泊施設予約サイトとは異なり、ホストが自らの家を貸し出すことで、より本当の旅の体験を提供しました。
これによって、ユーザーの旅行スタイルの多様化に対応し、市場を開拓することに成功しました。
また、AI技術を用いた予約管理や、マーケティング戦略の改善にも取り組み、ビジネスの拡大に貢献しています。
社内にDXを取り入れる手順
現在、多くの企業がDXを導入し、デジタル変革を進めています。しかし、DXは単にIT技術を導入するだけではなく、社内の考え方やプロセスを変えることが必要です。ここでは、社内にDXを取り入れるための手順について説明します。
手順①:本当にDXする必要があるのかを考える
まず、本当にDXする必要があるのかを考える必要があります。
DXは必ずしも全ての企業にとって適切な選択肢ではありません。
企業のビジネスモデル、市場の状況、競合環境などを分析し、DXによるメリットとデメリットを慎重に検討する必要があります。
手順②:社内の現状と課題を整理する
次に、社内の現状と課題を整理します。
社内の業務プロセス、ITシステム、人材のスキルセットなどを分析し、現在の課題を洗い出します。このプロセスにより、DXが必要とされる課題が明確化されます。
手順③:DXの目標を設定する
DXにおいては、目標を設定することが重要です。
DXを導入することで何を達成したいのか、どのような成果を出したいのかを明確にし、KPI(Key Performance Indicators)を設定します。KPIは、企業内外で成果を共有するための指標となります。
手順④:まとめた情報を社内で共有、合意を得る
DXの目的や目標、必要な予算、スケジュールなどをまとめた情報を社内で共有し、合意を得ることが大切です。
社員がDXについて理解し、共有することで、取り組みの質が上がります。また、上層部や経営陣の支援も得られるため、スムーズな進行が期待できます。
手順⑤:社内・社外のトレーニング
DXを実現するために必要なスキルや知識を持っている社員がいない場合は、社内・社外のトレーニングを行いましょう。
また、DXに必要なツールやシステムを使いこなせるようにするためにも、トレーニングは欠かせません。
手順⑥:結果を評価する
DXの実施によって得られた成果を評価することで、今後の改善点や課題を洗い出すことができます。
また、目標達成に向けて適切なアクションを打てるようになり、この評価結果は今後のDXの改善や進展に大きな影響を与えることになります。
DXを推進して成功するためのポイント
DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進して成功するためには、以下のポイントに注意する必要があります。
ポイント①:経営層の理解とバックアップ
DXには多額の投資が必要であり、経営層の理解とバックアップが不可欠です。
また、DXの目的や具体的な目標を設定し、それに基づいて進めることも重要になります。
ポイント②:社員の意識改革とスキルアップ
DXには社員の意識改革とスキルアップが必要です。
新しい技術やツールについて学ぶトレーニングや、社員が自発的にアイデアを出し合える文化を醸成することが大切です。
ポイント③:外部パートナーの選定
DXには外部パートナーの協力が不可欠です。
適切なパートナーを選定し、共同で取り組むことで、より効率的にDXを進めることができます。
DXに失敗した事例
DXの失敗事例には、以下のようなものが挙げられます。
ユーザー視点を無視したDXの推進
ユーザーのニーズや課題に寄り添わないDXを進めたため、採用率が低かったり、逆に業務に支障をきたす場合があります。
経営層のリーダーシップ不足
経営層がDXに積極的に取り組まなかったため、社内の意識改革が進まず、DXが挫折した例があります。
導入前の情報共有不足
DXに必要な情報共有が不十分だったため、進め方についての認識がズレ、結果として失敗に終わった事例があります。
DXとは「新しい価値の創造」、社内に導入して業務の変革を目指しましょう
DXは、単に既存の業務プロセスのデジタル化や省力化ではありません。
ビジネスモデルそのものを見直し、新しい価値を生み出すことが求められます。
社内にDXを導入することで、業務プロセスの改善や新しいサービスの開発が可能になり、組織全体の生産性向上やビジネスの成長に繋がるでしょう。
しかし、DXには失敗するリスクもあるため、本記事で解説した内容を押さえて適切な進め方を行い、成功に導くことが重要です。