アジャイル開発とは?基礎知識から分かりやすく解説

2023/07/24

IT業界は日々急速に進化しており、その中でもソフトウェア開発の手法も大きく変わってきています。
特に、「アジャイル開発」は現代のソフトウェア開発現場において不可欠な要素となっていますが、アジャイル開発とは一体何なのでしょうか?
そして、なぜこれほどまでに重要視されているのでしょうか?
本記事では、アジャイル開発の基本的な概念から、そのメリット・デメリット、そして成功のための要素まで、分かりやすく解説していきます。
アジャイルに初めて触れる方でも理解できるように、具体的な手法とともに、アジャイル開発の背景や理念についても触れていくので、ぜひ参考にしてください。


アジャイルとは?基本的な概念の紹介


アジャイル開発は、ソフトウェア開発の手法の一つで、迅速さと柔軟性に重点を置いています。

変化の激しいビジネス環境に対応するために生まれたアジャイルは、早期に製品を市場に投入し、ユーザーからのフィードバックを元に改善を重ねるという戦略を特徴としています。
この手法は、「アジャイルマニフェスト」の原則に基づいています。この原則とは、大切なのは文書化やプロセスではなく、「顧客満足」や「個人と対話」、「動作するソフトウェア」、「変化への対応」といった価値を重視する考え方です。

次節では、従来の開発手法である「ウォーターフォール型開発」とアジャイル開発の違いについて見ていきましょう。

従来のウォーターフォール型開発とアジャイル開発の違い


アジャイル開発とウォーターフォール型開発との違いを理解するために、それぞれの特徴を詳しく見ていきましょう。

ウォーターフォール型開発は、プロジェクトを段階的に進める手法です。
具体的には、まず要件定義、次に設計、実装、テスト、運用というように、一つの工程が完了した後に次の工程に進むスタイルを指します。
例えば、新商品の企画を立てる際には、まず市場調査を行い、次に商品開発、生産、販売という順序で進めるでしょう。

一方、アジャイル開発はこの流れを大きく変えます。
小さな機能単位で開発を進め、その都度ユーザーからのフィードバックを取り入れて改善を行うことで、変化の激しい市場環境に迅速に対応することが可能となります。
つまり、商品開発の途中でもユーザーの声に耳を傾け、必要であれば方向性を修正する柔軟さを持つのです。

これらの違いを理解することで、企業は自社のビジネス環境やプロジェクトの特性に応じて最適な開発手法を選択することが可能となるでしょう。

アジャイル開発の主な手法


アジャイル開発には、その実践方法を具体化したいくつかの手法が存在します。
今回は、その中でも特に代表的な「スクラム」と「XP」についてご紹介します。

スクラム


スクラムとは、小さなチームで短期間(通常2週間から1ヶ月)の「スプリント」を設け、その期間で成果を出すという手法です。
スクラムでは、毎日の「デイリースクラム」と呼ばれるミーティングで、進捗や問題点を共有し、必要に応じて計画を修正します。
例えば、ソフトウェア開発のプロジェクトでは、スプリントの初めに必要な機能を決定し、その機能が開発されるまでの期間をスプリントとします。
スクラムはチームのコミュニケーションを活性化させ、迅速なフィードバックと改善を可能にするのです。

XP(エクストリーム・プログラミング)


XPは、ソフトウェアの品質を高めるためのプラクティスを集めた手法です。
コードレビューの「ペアプログラミング」や、頻繁な「テスト駆動開発」などが特徴です。
たとえば、新たな機能開発を始める前に、その機能の動作を検証するテストコードを書き、その後で機能のコードを書くという手順をとります。
これにより、品質の高いソフトウェアの開発と、変更に対する耐性が得られるというわけです。


アジャイル開発の原則と価値観 「アジャイルマニフェスト」


アジャイル開発の核心をなすのが「アジャイルマニフェスト」と呼ばれる原則と価値観です。
これは、開発の現場から生まれた実践的な考え方であり、アジャイル開発を理解する上で欠かせません。
アジャイルマニフェストは以下の4つの価値を提唱しています。

  • プロセスやツールよりも「個人と対話」を重視する

  • 包括的な文書よりも「動作するソフトウェア」を重視する

  • 契約交渉よりも「顧客との協力」を重視する

  • 計画に従うよりも「変化への対応」を重視する



たとえば、製品の開発過程で顧客の要望が変わった場合、従来の開発方法では計画の見直しは困難でした。
しかし、アジャイル開発では、このような変化も柔軟に受け入れ、顧客と協力しながら最適な解決策を模索します。

また、動作するソフトウェアを重視するとは、形のある製品を早期に作り出すことで、具体的なフィードバックを得やすくする考え方です。
これにより、製品の品質向上や市場投入のスピードを上げることが可能になります。

アジャイルマニフェストの原則は、企業がビジネス環境の変化に対応しながら、顧客満足を追求するための指針となるのです。

アジャイル開発のメリット


アジャイル開発について、さらに理解を深めるために、具体的なメリットを紹介します。

主なメリットは以下の通りです。

  1. 変化への柔軟性

  2. ユーザーとの継続的なコミュニケーション

  3. 品質の高い製品の開発

  4. チームメンバーのモチベーション向上

  5. リスクの早期発見と対応


1. 変化への柔軟性


企業のビジネス環境は常に変化しています。市場のニーズが変わったり、新しいテクノロジーが出現したりすることは珍しくありません。
そんな中、アジャイル開発はその名の通り「敏捷性」を優先します。
それはつまり、変化に柔軟に対応できるということです。

例えば、ある企業が新たなサービスを開発している途中で、競合他社から似たようなサービスが発表されたとします。
このような状況では、それに対抗するために自社のサービスの方向性を微調整することが求められます。

アジャイル開発があれば、このような状況変化も迅速に製品開発に取り入れることが可能です。
そして、企業は競争優位性を維持しつつ、顧客満足度を高めることができます。

2. ユーザーとの継続的なコミュニケーション


アジャイル開発では、ユーザーとの継続的なコミュニケーションが重視されます。
製品の開発過程を透明性のあるものにし、ユーザーのフィードバックを直接取り入れることで、その要求により適切に対応することが可能となります。

たとえば、ソフトウェア開発の現場では、新機能の開発に取り組む前に、まずはプロトタイプを作成し、それをユーザーに試してもらうことが一般的です。
そのフィードバックに基づいて改善を重ねることで、ユーザーが真に必要とする機能を効率よく開発していくことができます。

このように、ユーザーとの継続的なコミュニケーションにより、製品の価値を最大化し、ユーザー満足度を向上させることができるのです。
それが、アジャイル開発におけるユーザーとのコミュニケーションの大切さなのです。

3. 品質の高い製品の開発


アジャイル開発の特徴の一つに、高品質な製品を生み出すことが可能な点があります。
これは、開発過程で行われる定期的なレビューやテストによるフィードバックの結果、問題点を早期に発見し改善することができるからです。

例えば、ある企業が新しいウェブサイトの構築を進めているとします。アジャイル開発を採用している場合、ウェブサイトの各ページや機能を一つずつ開発し、それぞれを完成させるたびにテストとレビューを行います。
その結果、デザインの不一致や操作の不便さなどの問題を早期に発見し、改善することができます。

このように、アジャイル開発では開発プロセス自体が品質管理の一環となっています。
その結果として、企業は最終的に顧客の期待を超える品質の高い製品を提供することが可能となるのです。

4. チームメンバーのモチベーション向上


アジャイル開発では、プロジェクト全体を一つの大きなタスクとして捉えるのではなく、それを小さなタスクに分割します。
これにより、チームメンバーは一つひとつのタスクを達成することで、自身の成果を明確に認識しやすくなります。
その結果、メンバーのモチベーションの向上が期待できます。

例えば、新しいソフトウェアの開発プロジェクトに取り組む企業を考えてみましょう。アジャイル開発では、このプロジェクトを具体的な機能や要素ごとに分割し、それぞれのタスクを個別に進めます。
そして、それぞれのタスクが完成するたびに、チーム全体でその達成を祝い、ポジティブなフィードバックを得ることができるでしょう。

これにより、チームメンバーは自分たちの手によって具体的な成果が生まれ、それが結果として高評価を得る経験を通じて、自身のスキルと貢献を認識する機会を持つことができます。
これが、アジャイル開発がチームのモチベーションを高める要因となっているのです。

5. リスクの早期発見と対応


アジャイル開発では、開発プロセスが繰り返し行われ、その都度結果を評価します。
これにより、問題が生じた際にすぐに対応することが可能となるのです。
それはまるで「早期発見、早期治療」の原則のように、問題を解決するための時間とコストを大幅に削減することができます。

例えば、新しいウェブサービスを開発する際に、初めてのリリース後、ユーザーからのフィードバックを基に機能の改善や修正を行う場合を考えてみましょう。
従来のウォーターフォール型では、全ての機能が完成してから初めてフィードバックを受け取るため、問題の発見と修正に時間がかかります。

一方、アジャイル開発では、初期段階から小さな機能を順次リリースし、ユーザーの反応を見ながら改善を進めます。
これにより、問題点を早期に捉え、修正することが可能となり、より早く、そしてコストを抑えて高品質な製品を完成させることができるのです。

アジャイル開発のデメリット


一方で、アジャイル開発にはデメリットも存在します。
これらを理解し、適切に対処しなければ、プロジェクトの成功が阻まれる可能性もあります。

1. プロジェクトの進行が不確定になる


アジャイル開発の特性上、全体のスケジュールがはっきりと確定しにくい面があります。
たとえば、新商品の開発に取り組んでいる会社がアジャイル開発を採用した場合、何度もフィードバックを受けて仕様変更を繰り返すため、完全に製品が完成する日が特定しづらくなります。

2. 頻繁なコミュニケーションが必要


アジャイル開発では頻繁なフィードバックが必要となり、そのためのコミュニケーションが欠かせません。
このため、コミュニケーションのハードルが高い組織では、アジャイル開発の導入が難しい場合があります。

3. 適切なスキルと経験が必要


アジャイル開発を上手く行うには、そのメソッドを理解し、適用する能力が求められます。
これは、アジャイルの考え方や手法を知らないメンバーがいると、開発が滞ったり、誤解が生じる可能性があるためです。

4. ドキュメンテーションが薄くなる可能性


アジャイル開発では、作業の進捗よりもドキュメンテーションよりも作業の進捗を優先します。
これは、後から参照するための資料が不足する可能性を意味しています。

5. スコープの変更が多くなる可能性


アジャイル開発では、顧客のフィードバックに基づいて頻繁にプロジェクトのスコープを調整します。
このため、予定していた作業範囲が大きく変わることもあります。この変更が頻繁に起こると、プロジェクトの進行自体が難しくなる可能性もあります。

アジャイル開発を成功させるのには?


アジャイル開発を成功させるためには、まずは強固なコミュニケーションが不可欠です。
進行状況や問題点を定期的に共有し、フィードバックを活発に交換することで、プロジェクトの目標に向かってチーム全体が一丸となって進むことができます。
たとえば、日次のスクラムミーティングを活用し、メンバー全員がタスクの進行状況や問題点を共有することで、進捗を把握しやすくなります。
また、アジャイル開発においては、変化を受け入れる柔軟性も重要です。
予期しない課題や新たな要求が発生した場合でも、それを迅速に取り入れ、計画を修正する能力が求められます。この際、バックログの優先順位を再評価することで、重要なタスクに集中し、効率的に作業を進めることが可能になります。
このように、強固なコミュニケーションと変化への柔軟性が、アジャイル開発を成功に導く重要な鍵となるでしょう。


アジャイル開発とは違う?リーン開発とデブオプス


アジャイル開発とは違う開発手法として、「リーン開発」や「デブオプス」があります。

「リーン開発」は、無駄を排除し、価値の創出に注力する開発方法です。
開発プロセス全体を見直し、無駄な作業を省き、価値ある成果物の提供を迅速化します。
一方、アジャイル開発は迅速なフィードバックループと改善に重きを置きます。
ただし、両者ともに顧客の要望に素早く対応するという共通点を持ちます。

「デブオプス」は、開発(Dev)と運用(Ops)の連携を強化し、品質の高いソフトウェアを迅速にリリースするための手法です。
具体的には、自動化ツールを用いてリリース作業を効率化するなど、開発と運用の壁を取り払います。
一方、アジャイル開発は開発プロセスそのものの迅速化と改善に焦点を当てています。

これらの手法はそれぞれ特徴がありますが、顧客満足度の向上と品質の保証という共通の目指すゴールに向けて、最適な手法を選択することが重要です。


まとめ


本記事で解説したアジャイル開発は、変化の激しい現代のビジネス環境に適応するための有効な開発手法です。
顧客の要求に素早く対応し、価値ある製品を早期に提供することで、高い顧客満足度を追求します。

ただし、その実践にはコミュニケーションの頻度や品質、チームメンバーのモチベーション管理、適切なスキルと経験、そしてリスクの早期発見と対応といった要素が求められます。
また、アジャイル開発だけでなく、リーン開発やデブオプスなど他の開発手法との比較を理解し、それぞれの特性を活かすことも重要です。
以上のような理解をもとに、企業は最適な開発手法を選択し、その実践を通じてビジネスの成果を最大化することが可能となるでしょう。

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