ペーパーレス化とは?メリットや事例を解説【思わぬ落とし穴も】

2023/07/24

近年、ビジネスの世界ではペーパーレス化が大きなトピックとなっていますが、その具体的な内容や意義、またどう実現すればいいのか、誰もが一度は頭を悩ませるでしょう。
そこで今回は、「ペーパーレス化」について、その定義からメリット、デメリット、そして具体的な導入方法や社内での変化を具体的な事例を交えて解説します。最後には、ペーパーレス化が進むことで何を目指すべきか、つまりデジタルトランスフォーメーション(DX)とは何かについても触れてみたいと思います。
私たちの生活や働き方がデジタル化されていく中で、ペーパーレス化は避けて通れないテーマとなっています。
この記事を通じて、ペーパーレス化がもたらす変化を理解し、あなたのビジネスや生活に活かしていただければ幸いです。

ペーパーレス化とは?なぜ推進される?


ペーパーレス化とは、文字通り「紙を使わない」状態を目指す取り組みの一つです。書類やデータを紙ではなく、デジタルデータとして管理し、情報共有を行うことを指します。
では、なぜ企業はペーパーレス化を推進するのでしょうか?
第一に、コスト削減です。紙やプリンターインクなどの消耗品、ファイル保管スペースの必要性が減ります。さらに、電子データは物理的な場所を必要とせず、必要なデータをすぐに検索し、閲覧できるため労力と時間も削減できます。
第二に、環境への配慮です。ペーパーレス化は森林資源の保護につながり、CO2排出量の削減にも寄与します。これは企業の社会的責任(CSR)の観点からも大きなポイントとなります。
最後に、情報のセキュリティが挙げられます。適切なセキュリティ対策を施すことで、データ漏洩リスクを減らし、安全に情報を管理できます。
以上のような理由から、企業が積極的にペーパーレス化を推進しているのです。

ペーパーレス化のメリット


では、ペーパーレス化の具体的なメリットについて詳しく見ていきましょう。

主なメリットは下記の通りです。

  • コスト削減: 素材・保管・労力の面から

  • 環境貢献: 持続可能な社会への一歩

  • 情報セキュリティ: データ漏洩リスクの軽減

  • 労働効率の向上: データ検索・共有の容易さ

  • 災害対策: 電子化によるデータ保全



コスト削減: 素材・保管・労力の面から


ペーパーレス化がもたらすメリットの一つとして、「コスト削減」があります。これは主に素材、保管、労力の各面に対するものです。
まず、素材の面では、紙やプリンターのインク、それに加えてプリンター自体の保守・修理コストが削減できます。電子データとして管理することで、これらの消耗品にかかる経費を抑えることが可能です。
次に、保管の面です。紙の書類は物理的なスペースを必要とします。アーカイブや整理にも手間と時間がかかります。しかし、データをデジタル化することで、情報の保管・管理が容易になります。
さらに、労力の面でもメリットがあります。紙の書類を探す、整理する、運ぶといった作業がなくなります。


これらの点から、ペーパーレス化により、企業の運営コストを大幅に削減することが可能となるのです。

環境貢献: 持続可能な社会への一歩


企業活動において「環境貢献」は重要なテーマとなっています。ペーパーレス化はその一環として、企業が持続可能な社会に向けた取り組みを進める手段の1つとなります。
ペーパーレス化を進めることで、まず紙の消費量を抑えることができます。紙を作るためには木材が必要で、それは森林の伐採を意味します。しかし、ペーパーレス化を推進することで森林資源の保護に寄与し、生態系の維持を支えられるでしょう。
さらに、紙を作るプロセスや紙類の廃棄により発生するCO2の排出量を削減可能です。気候変動への対策として、CO2の排出削減は企業の社会的責任(CSR)として求められています。
また、電子化されたデータはリモートワークやテレワークにも対応しやすく、通勤時に発生する車などによる二酸化炭素の排出も減らすことができます。これらの観点から見ても、ペーパーレス化は持続可能な社会への一歩と言えるでしょう。


情報セキュリティ: データ漏洩リスクの軽減


企業がペーパーレス化を進める際、その大きなメリットの一つとして挙げられるのが「情報セキュリティの向上」です。具体的には、データ漏洩リスクの軽減が期待できます。
紙の書類には、見落としがちですが、実は多くのリスクが存在します。例えば、重要な書類が誤って廃棄されたり、なくなったりする可能性があります。また、第三者に見られる場所に書類を置いてしまったり、紛失したりすることで、情報が漏洩する可能性など。
それに対し、データをデジタル化することで、適切なセキュリティ対策を施すことが可能になります。パスワードによる保護や、暗号化によりデータの不正な閲覧・漏洩を防ぐことができます。また、バックアップを取ることで、データの紛失リスクを低減することも可能です。
実際の事例としては、大手企業が重要な書類を電子化し、それに対して厳重なセキュリティ対策を施すことで、データ漏洩事件を大幅に減少させています。
これらからも、ペーパーレス化は情報セキュリティ強化に寄与し、データ漏洩リスクを軽減する大きな手段となるでしょう。

労働効率の向上: データ検索・共有の容易さ


ペーパーレス化がもたらすもう一つのメリットとして、「労働効率の向上」が挙げられます。特に、データの検索や共有の容易さがこれに寄与します。
紙ベースの作業では、必要な書類を探すためには、ファイルキャビネットや書類の山から探さなければなりません。また、書類のコピーを取り、それを他の部署やメンバーと共有する必要があります。これらは時間と労力がかかる非効率な作業です。
しかし、データがデジタル化されている場合、検索機能を使って必要な情報を素早く見つけ出すことができます。さらに、電子データはメールやクラウドストレージを通じて即座に共有することが可能です。
具体的な事例としては、業務報告のデジタル化を進めた企業があります。以前は、報告書を紙で作成し、それを各部署に配布していましたが、デジタル化により報告書を即座に全社員と共有できるようになりました。その結果、情報のアクセス性が向上し、業務効率が大幅にアップしました。
これらの点から、ペーパーレス化はデータの検索・共有の容易さを通じて労働効率を向上させる大きな効果をもたらします。

災害対策: 電子化によるデータ保全


ペーパーレス化が企業にもたらすメリットの一つに「災害対策」があります。これは、電子化によるデータ保全と深く関連しています。
紙の書類は、水濡れや火災、地震といった自然災害により容易に損失するリスクがあります。また、重要な情報が全て一箇所に集約されている場合、その場所が何らかの事情でアクセス不可能になった時には、事業の継続が難しくなります。
一方で、データを電子化しクラウド等に保管しておくことで、自然災害からのデータ保全、そして業務継続を図ることが可能となります。また、適切にバックアップを取ることで、万が一のデータ消失からも保護されます。
具体的な事例としては、東日本大震災時に電子化とクラウドストレージを活用していた企業があります。オフィスが被災し物理的な書類が全て失われても、事業の継続が可能だったとの報告がありました。
これらからも、ペーパーレス化は災害対策としても非常に効果的であると言えるでしょう。

ペーパーレス化推進の落とし穴【デメリット】


ここまで、ペーパーレス化によるメリットを挙げてきました。

しかし、そんなペーパーレスにもデメリット、思わぬ落とし穴があるため注意しなければいけません。

具体的には下記のような点に注意して活用するようにしましょう。

  • 初期投資の必要性: 新たなシステム導入のコスト

  • 教育・研修の必要性: 社員への理解と使用能力

  • セキュリティリスク: データの漏洩や改ざん

  • 法規制との整合性: 電子文書の法的効力

  • 人間の心理的抵抗: 変化への抵抗感



初期投資の必要性: 新たなシステム導入のコスト


ペーパーレス化を進めるにあたり、最初に考慮しなければならないのが「初期投資の必要性」です。これは新たなシステム導入のコストを指します。
ペーパーレス化には、新たなITシステムの導入や既存のシステムの改修が必要となることが多く、それに伴う初期投資が必要です。具体的には、電子文書管理システムの導入費用、必要なハードウェアの購入費用、システム導入に伴うコンサルティング費用などが考えられます。
事例として、ある中小企業がペーパーレス化を進めようとしたとき、初期投資として数百万円のコストがかかったというケースがあります。また、大企業の場合はさらにその規模が大きくなるでしょう。
しかし、こうした初期投資は、中長期的な視点で見れば、紙ベースの管理コストや人間の作業コストを削減することにつながるのです。だからこそ、初期投資の負担を理解し、適切な計画を立てて進めていくことが大切となります。

教育・研修の必要性: 社員への理解と使用能力


ペーパーレス化に伴うもう一つの問題点として「教育・研修の必要性」が挙げられます。社員一人ひとりが新しいシステムの使い方を理解し、その使用能力を身につけることが求められます。
新しいシステムが導入されても、それを使いこなせなければ意味がありません。したがって、社員全員が新システムを効果的に利用できるようになるまでの研修や教育が必要となります。これには時間と費用がかかることを覚悟しなければなりません。
例えば、ある企業では新たに導入した電子文書管理システムに対して、全社員向けの研修を数回にわたって開催しました。しかし、一部の社員がシステムの使い方を理解するのに時間がかかり、その間業務の効率が落ちてしまったという事例があります。
これを避けるためには、事前の段階で十分な教育計画を立て、システム導入に伴う人員の教育を怠らないことが重要です。また、研修の際には実際の業務に即した内容を取り入れ、具体的な操作方法を学ぶことが重要になります。

セキュリティリスク: データの漏洩や改ざん


「セキュリティリスク」もペーパーレス化に伴う注意点の一つです。すなわち、データの漏洩や改ざんのリスクがあります。
物理的な文書であれば、盗難や紛失といったリスクはありますが、データ化された情報はインターネット上での漏洩や、悪意ある第三者による改ざんのリスクが生じます。これらは企業の信頼や業績に大きなダメージを与える可能性があります。
実際の事例として、ある企業の内部情報が外部に漏洩し、その結果、企業の株価が下落するという事態が発生したことがあります。この企業は、データ管理におけるセキュリティ対策が不十分だったことが原因となりました。
そのため、ペーパーレス化を推進する際には、データの保管やアクセス管理、そしてネットワークのセキュリティ強化など、情報セキュリティ対策に十分な注意を払う必要があります。

法規制との整合性: 電子文書の法的効力



「法規制との整合性」もペーパーレス化を進める上で考慮すべき課題の一つです。具体的には、電子文書が法的な効力を持つか、そしてそれがどの程度認められているのかという点です。
一部の法令では、文書は紙の形で保管することが求められています。しかし、これらの法令が制定された当初は、電子化が一般的でなかった時代の名残であるため、現代のビジネス環境には合わない面があります。ペーパーレス化を進める企業は、こうした法令によって電子文書の利用が制限される可能性があるのです。
具体的な例を挙げると、医療業界では、患者の診療情報を電子化することに抵抗感を持つ医療機関があります。それは、診療情報は紙のカルテで管理することが慣例となっており、また、その法的な保護が強く求められているためです。
このような法規制に対する認識を深め、その上でペーパーレス化を進めていくことが求められます。そのためには、法律家や専門家の意見を求めるなど、専門的な知識を得ることが重要となるでしょう。また、法令が変更される可能性もありますので、最新の法規制情報にも常に注目する必要もあります。

人間の心理的抵抗: 変化への抵抗感


ペーパーレス化に取り組む企業は、従業員の「変化への抵抗感」に対処する必要があります。これは、人間が新たな環境やシステムに適応するのに必要な心理的なエネルギーと時間を示しています。特に、慣れ親しんだ紙ベースの作業から電子化へと移行する際には、抵抗感や不安を覚える人も少なくありません。
例えば、ある企業では、新たに導入した電子決裁システムに対し、従業員からは「操作が難しい」「紙の方が見やすい」といった声が上がりました。これは、新システムへの不慣れや既存の業務フローへの固着が原因となっています。
このような抵抗感に対処するためには、従業員の意見を尊重し、新たなシステムの利便性を理解してもらうための教育やサポートが重要となります。また、一度に全てを電子化するのではなく、段階的に導入していくことで、心理的な負担を軽減することも可能です。新たな挑戦には必ず抵抗が伴いますが、それを乗り越えることで企業の成長が見込めます。


ペーパーレス化を導入するときのポイント



ペーパーレス化を成功させるためには、その導入に当たっていくつかの重要なポイントを押さえることが必要です。まず第一に、組織全体の意識統一が求められます。トップダウンの指示だけでなく、全従業員がペーパーレス化のメリットと目的を理解し、取り組む意識が重要です。
次に、現状の業務フローを見直すことも大切です。紙ベースの業務をそのまま電子化するのではなく、デジタル化により効率的になるよう業務フロー自体を改善することが求められます。
また、導入するシステムは、従業員が使いやすいものを選ぶことが必須となります。使い勝手が悪いと、システムがなかなか定着せず、結果的にペーパーレス化推進が遅れる可能性があるからです。
最後に、十分な研修とフォローを行うことで、新たな環境に対する従業員の不安を和らげ、スムーズな移行を実現します。
これらのポイントを押さえ、組織全体で取り組むことで、ペーパーレス化はより成功へと近づくでしょう。

ペーパーレス化で社内はどう変わる?【事例紹介】


ペーパーレス化を導入した企業では、具体的にどのような変化が起きるのでしょうか。ここでは、ある企業の実例を紹介いたします。
A社は、ペーパーレス化により業務の効率化を図りました。従来、書類の準備と管理に多くの時間を割いていた社員たちは、電子化により大幅に作業時間を短縮しました。データ検索の手間が減り、情報共有も容易になったため、必要な情報を素早く取り出せるようになりました。これにより、創造的な業務により多くの時間を割くことが可能になりました。
さらに、B社ではペーパーレス化によるコスト削減が実現しました。紙やプリンターインク、ファイリング用品などの物品購入費用や、保管スペースの維持費が大幅に減少。これらは企業にとって大きな経済的なメリットとなりました。
また、C社では電子データのバックアップ体制により、災害時のデータ保全が可能となりました。これにより、企業活動の継続性を保つことができ、業績に大きな影響を及ぼすことなく事業を運営することができました。
以上の事例から、ペーパーレス化は企業にとって多方面に渡るメリットをもたらします。自社の状況に応じたペーパーレス化の進め方を検討し、より良い企業運営を目指しましょう。


最終的にはDXを目指す


ペーパーレス化は、企業がデジタルトランスフォーメーション(DX)を達成するための一歩であると言えます。
DXとは、デジタル技術を活用してビジネスや組織を根本から変革することを意味する取り組みのことです。
ペーパーレス化は、企業の業務効率化やコスト削減をもたらしますが、それだけが目的ではありません。業務プロセスをデジタル化することで、データ分析が容易になり、その結果を活用することで新たなビジネスチャンスを見つけることも可能となります。
また、ペーパーレス化によって得られるデータは、AIやマシンラーニングといった最先端技術を活用するための「燃料」にもなります。これらの技術を活用することで、より高度な業務効率化や新たなビジネスモデルの創出が可能となるのです。
さらに、ペーパーレス化は企業の環境貢献にもつながります。社会的な問題解決への取り組みは、企業のブランド価値向上やステークホルダーからの信頼獲得にも寄与するでしょう。
こうした観点から、ペーパーレス化は単なるコスト削減の手段ではなく、企業の(DX)デジタルトランスフォーメーションを進め、持続可能な成長を達成するための重要なステップと言えます。

まとめ


本稿では、ペーパーレス化のメリットとデメリット、導入時の注意点、社内変化の事例、そしてデジタルトランスフォーメーション(DX)への影響について詳しく解説しました。ペーパーレス化は単に紙をなくすだけでなく、効率的な業務運営、環境への配慮、情報管理の向上、労働効率のアップ、そして災害時のデータ保全といった数々のメリットを企業にもたらします。
しかしながら、新たなシステムの導入コスト、教育・研修の必要性、セキュリティリスク、法規制の整合性、そして人間の心理的抵抗といったデメリットも無視することはできません。適切な計画と準備を通じてこれらの課題を解決し、成功へと導くことが求められます。
最終的に、ペーパーレス化は企業のDX推進に貢献します。データの活用やAIの導入を可能にし、企業の持続可能な成長を促進します。
企業はその重要性を理解し、具体的な行動を起こすべきでしょう。

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