フルスクラッチ開発とは?メリット・デメリット、向いている企業の特徴を紹介

2023/05/28

競争激化とともに、ビジネス環境の急速な変化が企業にとって課題となっています。

その中でも、システム導入に関する問題が深刻化しており、システムを導入する際、既存のシステムをカスタマイズする場合もありますが、既存のシステムに制限されたカスタマイズやアップグレードの制約が問題視されています。

このような問題を解決するために、自社に最適なシステムを構築することが求められており、フルスクラッチ開発という手段が解決策として有効です。

今回は、フルスクラッチ開発の基礎知識やメリット・デメリット、進め方などを解説し、自社に最適なシステムを構築するための参考情報を提供いたします。


フルスクラッチ開発とは?基礎知識を解説


フルスクラッチ開発とは、一からシステムを設計・開発する方法のことを指します。

つまり、既存のシステムをベースに改良やカスタマイズをするのではなく、全く新しいシステムを作り上げる手法です。

この手法を用いることで、自社に最適なシステムを構築することができますが、一方で開発には時間とコストがかかるため、企業にとっては大きなリスクとなることもあります。

また、フルスクラッチ開発では、開発に必要な技術やツールを全て自社で用意する必要があるため、企業が技術的なリソースを持っていることが求められます。

ただし、最近ではクラウドサービスの普及や、オープンソース技術の発展により、技術的なハードルは低くなっているでしょう。

フルスクラッチ開発は、自社に最適なシステムを作ることができるため、一部の企業で採用されることがありますが、開発にかかる時間やコストが大きな問題となるため、企業の戦略的な判断が必要となります。


フルスクラッチ開発のメリット


フルスクラッチ開発の具体的なメリットを紹介します。

主なメリットは以下の通りです。

自社にマッチしたカスタマイズができる
修正や変更に柔軟に対応できる
セキュリティを強化できる

自社にマッチしたカスタマイズができる


1つ目のメリットは、企業が自社に合わせたカスタマイズをできることです。

フルスクラッチ開発を用いることで、自社の業務やビジネスプロセスに沿ったシステムを作り上げられます。

例えば、既存のシステムでは業務の一部をカバーできない場合や、業務が複雑で既存のシステムでは対応できない場合などがあります。

しかし、フルスクラッチ開発であれば、自社の業務やビジネスプロセスに合わせてシステムを構築することが可能です。

また、既存のシステムとのインテグレーションや連携なども自由に行えるため、より効率的な業務フローを実現できるでしょう。

修正や変更に柔軟に対応できる


フルスクラッチ開発はカスタマイズ性が高く、修正や変更にも柔軟に対応できるメリットがあります。

その理由は、システムを完全に新しく構築することで、自社のビジネスプロセスや業務フローに合わせたカスタマイズを実現できるからです。

他社製品や既存のシステムを導入する場合、その製品やシステムの仕様に合わせなければならず、自社のビジネスプロセスや業務フローを変更する必要があるかもしれません。

しかし、フルスクラッチ開発では自社の要件を基に、完全に新しいシステムを作り上げることができるため、自社に最適なカスタマイズを実現することができます。

また、フルスクラッチ開発で作られたシステムは、システムの全ての要素が開発元企業によって作られているため、変更や修正にも柔軟に対応できます。

外部から購入した製品や既存のシステムとは異なり、自社で開発したシステムであれば、必要な変更や修正を迅速かつ正確に実施できるからです。

セキュリティを強化できる


フルスクラッチ開発によって、導入するシステムのセキュリティを強化できる理由はいくつかあります。

まず、フルスクラッチ開発では、自社のセキュリティ要件に応じたセキュリティ対策をシステムに組み込むことができます。

例えば、従来の既存システムの改修やカスタマイズでは、セキュリティ上の問題が残る可能性がありますが、フルスクラッチ開発では、システムの全ての部分を自社のセキュリティ要件に合わせて開発することが可能です。

さらに、フルスクラッチ開発では、外部のライブラリやフレームワークを使用する必要がないため、外部の脆弱性やセキュリティ上の問題が原因で発生するセキュリティリスクを軽減することができます。

また、フルスクラッチ開発によって、自社独自のセキュリティ規格やセキュリティポリシーに沿ったシステムを構築することも可能です。

企業が重要な情報を扱うシステムを導入する場合には、セキュリティ対策が非常に重要になるため、フルスクラッチ開発によって、自社のセキュリティ要件に合わせたセキュリティ対策をシステムに組み込むことができ、より高いセキュリティレベルを実現できるでしょう。


フルスクラッチ開発のデメリット


次にフルスクラッチ開発を導入するデメリットを紹介します。

主なデメリットは以下の通りです。

開発コストが高い
導入するまでに時間がかかる
保守の負担が大きくなる

開発コストが高い


フルスクラッチ開発は、一からシステムを構築するため、開発コストが高くなる傾向があります。

その理由としては、必要な機能の洗い出しや要件定義から始まり、アーキテクチャの設計、コーディング、テスト、デプロイといった一連の工程を全て手作業で行う必要があるためです。

また、技術的な知識やスキルが必要であることから、開発チームの人員や技術者のスキルに応じたコストがかかることがあります。

そのため、既存のソフトウェアやフレームワークを利用することで開発期間やコストを削減する方法が検討される場合があります。

導入するまでに時間がかかる


フルスクラッチ開発は、企業が自社に合ったシステムを構築することができるというメリットがある一方、そのためには多くの時間を要することがあります。

開発に必要な要件定義や設計、実装、テストなどの工程を全て手掛けるため、その作業にかかる時間は既存のシステムの導入に比べてかなり長くなることがあります。

また、開発に携わる人員のスキルや経験によっても時間が変わるため、適切な人材が揃っている開発会社に依頼しなければいけません。

フルスクラッチ開発を導入する企業は、開発に必要な時間やコストを見据えて、計画的なスケジュールを立てるよう注意しましょう。


保守の負担が大きくなる


フルスクラッチ開発によって作られたシステムは、他の既存のシステムと比べて独自性が高いため、保守においても専門的な技術や知識を要する場合があります。

特に、システムの仕様や機能が変更された場合、それに合わせてプログラムの修正や再開発が必要になることがあります。

このため、システムの保守においては、それに関するコストや時間の負担が増加することがあるのです。

フルスクラッチ開発と比較されやすいシステムの種類


自社に導入するシステムを選ぶ際、フルスクラッチ開発とよく比較されやすい開発手法について紹介します。

システムに求める機能などを考慮し、自社に導入するのに適切な開発手法を選ぶようにしましょう。

フルスクラッチ開発と比較されやすい開発手法は以下の通りです。

ローコード開発
ノーコード開発

フルスクラッチ開発・ローコード開発・ノーコード開発の違いを分かりやすくするために表を用いて説明します。


























開発手法 概要 メリット デメリット
フルスクラッチ開発 一からシステムを開発する手法

  • 自由度が高い

  • カスタマイズ性が高い

  • セキュリティが強化できる




  • 開発コストが高い

  • 導入までに時間がかかる

  • 保守の負担が大きい


ローコード開発 ビジュアルなインタフェースを利用してコードを生成する手法

  • 開発効率が高い

  • 専門知識がなくても開発が可能

  • カスタマイズ性がある




  • カスタマイズ性に限界がある

  • プロジェクト規模によっては制限がある

  • 拡張性が低い


ノーコード開発 ビジネスロジックやデータモデルを組み合わせて、アプリケーションを開発する手法

  • 開発効率が極めて高い

  • 専門知識がなくても開発が可能

  • カスタマイズ性がある




  • カスタマイズ性に限界がある

  • 制限が多い

  • 拡張性が低い






ローコード開発


ローコード開発は、最低限のプログラミング知識で開発する手法です。

フルスクラッチ開発と比較すると、開発期間や開発コストが大幅に短縮できる点が特徴的です。

ローコード開発は、ビジュアルなドラッグ&ドロップ操作で簡単に開発できるため、エンドユーザーが直接アプリケーションを開発できるという点もあります。

ただし、柔軟性やカスタマイズ性はフルスクラッチ開発に比べ劣る傾向があり、大規模かつ複雑なシステム開発には向いていないでしょう。

フルスクラッチ開発とローコード開発は、用途に応じて選択されるべき開発手法であり、それぞれの特徴を踏まえて検討する必要があります。

ノーコード開発


ノーコード開発は、プログラミングの知識がなくてもビジネスアプリケーションやウェブサイトを開発することができる開発手法です。

プログラミングの代わりにドラッグ&ドロップで操作するインターフェースや、テンプレートからの選択、自動生成機能などを提供するプラットフォームがあります。

そのため、開発者の技術レベルに依存せず、誰でも簡単にアプリケーションを開発することが可能です。

また、開発コストや時間の短縮、エラーの削減など、ビジネス上のメリットも大きく、特に中小企業や非技術系企業にとっては有効な手法となっています。

ただし、ノーコード開発には柔軟性やカスタマイズ性に制限があること、複雑な処理や高度な機能を必要とする場合には限界があることなどの課題もあるので注意しましょう。

フルスクラッチ開発の進め方


では、実際に企業がフルスクラッチ開発のシステムを導入するときの進め方、手順について解説します。


1.「目的の明確化」
フルスクラッチ開発を導入する目的を明確にし、ビジネスのニーズや課題を整理します。具体的には、システムのどの部分を開発したいのか、どのような機能が必要か、どのようなユーザー体験を提供したいかなどを洗い出します。


2.「プロジェクトチームの編成」
プロジェクトチームを編成し、プロジェクトマネージャー、開発者、テスターなどの役割を明確化します。また、必要に応じて外部の開発会社やコンサルタントなどの専門家を加えることも考えます。


3.「要件定義」
目的を明確にしたら、具体的な要件定義を行います。ここで開発するシステムの機能や性能、制約事項などを明確にします。必要ならば、ユーザーインタビューやワークショップなどを実施し、ユーザーのニーズを理解することが重要です。


4.「設計・開発・テスト」
要件定義が完了したら、システムの設計・開発・テストを進めます。開発者は、アーキテクチャやデータベース、UIなどの設計を行い、コードを実装します。テスターは、システムの品質を担保するためのテストを実施し、開発者が修正を行います。


5.「リリース」
システムが完成したら、リリース準備を進めます。必要に応じて、デプロイ手順や運用マニュアルの作成、トレーニングなどを行い、ユーザーがシステムをスムーズに利用できるようにします。


以上のように、フルスクラッチ開発の導入には、目的の明確化から開発・テスト・リリースまでの一連のプロセスが必要です。開発コストや時間をかけることになりますが、自社のビジネスニーズに合った柔軟性の高いシステムを開発することができます。


フルスクラッチ開発が向いている企業の特徴


フルスクラッチ開発は、独自の要件や業務フローを持つ企業や、既存のシステムにカスタマイズが必要な場合に向いています。

また、以下のような特徴を持つ企業にとって、フルスクラッチ開発は有益です。

セキュリティ性が重要な企業
業務フローが複雑な企業
将来的な拡張性が必要な企業

セキュリティ性が重要な企業


特に、金融機関や医療機関など、機密性が高い情報を扱う企業は、自社独自のセキュリティ対策を実施する必要があります。

フルスクラッチ開発は、企業自身のセキュリティポリシーを実現するために、柔軟な開発手法を得意としています。

業務フローが複雑な企業


業務フローが複雑な企業では、既存のパッケージソフトでは対応できないことがあります。

フルスクラッチ開発は、企業のニーズに合わせた柔軟な開発ができるため、複雑な業務フローに対応することができるでしょう。


将来的な拡張性が必要な企業


企業が拡大し、システムに新たな要件が追加されることがあるため、将来的な拡張性が必要です。

フルスクラッチ開発では、要件変更や追加に柔軟に対応できるため、将来のビジネス拡大に対応できます。


まとめ:自社にマッチしたシステムを導入しましょう


フルスクラッチ開発は、自社にマッチしたシステムを導入する際、選択肢の1つになります。

業務の特殊性や独自性が高く、既存のシステムには対応できない場合、自社のビジネスモデルに直接関係する場合は、特にフルスクラッチ開発が向いているでしょう。

しかし、フルスクラッチ開発はコストや時間的な負担が大きく、適切な開発チームやプロジェクトマネージャーが必要です。

また、保守や運用にも多大な負担がかかるため、長期的な視点での見積もりが必要になります。

そのため、導入前には業務内容や要件を十分に分析し、自社にとって最適な選択肢が何かを検討しなければいけません。

フルスクラッチ開発だけでなく、ローコード開発やノーコード開発といった代替手段もあるため、自社のニーズに合ったシステム開発手法を選択することが重要です。

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